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卒業生に聞く―弁理士、芸術・科学・知財クリエイターとは?(03/25up)

2026.03.25

[行事]

フェリスでは先日、卒業生で弁理士・出版社代表をされている大樹七海さん(雅号)をお招きして、ご自身のお仕事や進路の選び方についてお話していただきました。

大樹さんは元々理系の大学を卒業し、国立研究所で勤務されていました。しかし、そこで研究をしているうちに、「技術をひたすら研究しているだけではいけない。生み出した技術を守るための法律の知識も必要だ」と気づき、大学院で知的財産権法を学び、知的財産の専門家である弁理士の道へ進むことに決めたそうです。

その後、弁理士としてご活躍される中で、現代社会では、これまでご自身が経験してきた学術(技術研究)の領域と実務(法律)の領域、そして一般生活の領域という三つの領域が分断されていることに気が付きます。「分断」とはつまり、学術と実務と生活という三つの領域は、各領域における世界観や専門用語が違いすぎるあまりに、十分な相互乗り入れができていないということです。たとえば、ふだん法律に携わっていない人が、生活上の必要から法律を調べようとしても、用語や条文の書き方の難解さにつまずいたり、実生活上に当てはめるべき法律が分からず断念してしまうことが多かったりする、といった状況が分かりやすいかもしれません。
そこで昨年、大樹さんは「この分断を埋めるためのソフトパワーが必要だ」との考えから、出版社を設立し、専門書だけでなく、専門領域に慣れていない人でも理解しやすいコンテンツを一から企画・制作・編集して出版する事業を開始されました。企画からサプライチェーンづくりまで、すべての作業をおひとりで行っているそうです。

複数の業種を経験され、現在でも多角的な事業に関わっている大樹さんから生徒たちへの今後に向けたアドバイスは、「二つ以上の強みを持ち、掛け合わせること」・「負の力に打ち勝てるような叡智と動じない精神力の肝を養うこと」の二点でした。特に後者については、「For Othersの志に基づいて他者のために行動するためには、高い能力と強靭な精神が必要だ。だから、まず今の段階では、そのための器を作ることが肝要である」というお言葉もいただきました。ご自身のスキルを活かして行動した大樹さんならではの深みのあるメッセージに、生徒たちも圧倒されたようで、そこかしこで一生懸命にメモを取る姿が見られました。

最後の質疑応答では、大樹さんが在学中には芸術方面への関心が強かったというお話を踏まえて、生徒から「芸術が軽視されているように思われる昨今の世の中で、芸術に携わり、再び振興させるにはどうしたらよいと思うか」という質問が出ました。これに対して大樹さんは、「物事には揺り戻しがあるので、今は軽視されている芸術も、いつか自然と盛り返す時期がやってくるかもしれない。だから、その時を待つ現代においては、芸術が途絶えないように『文化の守り人』として働く人が必要だ。この世にはあなたと同じように芸術が必要だと考えている人はいるはずだから、そういう人を探して協力しながら、次の揺り戻しが来るまで、現代社会のニーズとのバランスを取りながら芸術の火が消えないように守ってゆく。そういう関わり方ができるかもしれない」というご回答があり、質問をした生徒も、聴いていた生徒たちも、新たな視点に目を拓かれたようでした。

一つの専門だけに留まらず、自らの興味関心や社会の構造に目を向け続けながら、あらゆる領域で他者のために働く。大樹さんのキャリアは、多くの学びを軸としながら、他者に必要だと思われる働きを自ら行うという点で、フェリスが大切にしている「学問の尊重」や「For Others」の精神とも通じ合っています。

キャリア探究は人生に一度きりのことではなく、一生続いてゆくものです。在校生にとってはまだまだ先のことに思えるかもしれませんが、いつか必ずキャリア探究という問いにぶつかります。その時に迷わない軸を見つけるために、あらゆることに果敢に挑んでゆく6年間を過ごしてほしいと願っています。

講堂にて

大樹さんの出版社「知成堂」のファイルと缶バッジ

生徒たちにお配りいただきました

久々の母校にて