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「シリーズ:なぜ人は学ぶのか」③画家の卒業生にインタビュー(前編)(11/27UP)

2025.11.27

[プロジェクト]

「シリーズ:人はなぜ学ぶのか」も今回で3回目となりました。
今回は、画家として活躍するフェリスの卒業生・Cさんにインタビューを行いました。Cさんは、フェリス在学中には美術部・ポピュラーミュージック部の二足のわらじで活動し、卒業後には美術大学へ進学しました。現在はグループ展や個展の実施、画集への掲載など、精力的に作品を発表しながら画家として活動されています。
比較的少数派の美術という進路を選び、現在の活動に至るまで、どのような学びがあったのか。前回までとはまた一味違ったフェリスの「学び」を捉えることができるインタビューとなっております。
今回は、Cさんの自己紹介と学生時代、そして進路選択についてメインで伺いました。

①Cさんの現在のご職業・活動などについて教えてください。
昨年度大学院を修了し、現在アルバイトをしながら画家として活動しています。

②大学・大学院での専攻とそのきっかけについて教えてください。
大学では日本画を専攻しており、大学院ではデザインを専攻していましたが、基本的には日本画の画材を使用して制作をしています。
幼い頃から絵や字をかいて褒められることが多く、得意な意識がありました。フェリスに入学して数年過ごすうちに、周りに比べて勉強ができないと思い始め、自分がより得意な方を目指したいと思い美術の進路に関心を持ち始めました。同期に美大進学希望者が何人かいたこともあり、ついていった美大予備校で見たデッサンや着彩画に大変刺激を受け、受験するに至りました。
日本画を選んだ理由は、日本画の受験用に描く静物着彩が好きだったからですが、学んでいくうちに日本画の絵具の綺麗さもとても魅力的に思えてきました。学部入学時には大学院進学や画家としての活動は全く視野に入れていなかったのですが、制作に夢中になって気がついたら今の状況になっていました。
大学院への進学のきっかけは、学部時代によく展示をしていた学外のギャラリーの方が、君はあの研究室が合うんじゃない?と声をかけてくれたことです。
デザイン科ですが日本画にルーツのある研究室で、学部とは違った環境に身を置くなかで新しく学べたことがたくさんありました。絵画に限らず、各々が多様な方法で制作している状況に置かれることで、自分の立ち位置について省みる良い時間になったと思います。

③フェリス在学中はどんな学生でしたか。
フェリスにいた頃は正直真面目な生徒ではなかったです。とにかく朝起きるのがとても辛かった記憶があります。今なお朝は苦手です…。
入学当初から振り返ってみると、J1(中1)の頃、特に前期は人間関係に苦戦して、自分の性格を調整するのにエネルギーを使っていました。当時、序盤で自分のどこに難があるのか客観視して直せたことは、後から思えばかなり大きな財産です。
J2(中2)〜J3(中3)は全体的に無気力であまり覚えていないのですが、S1(高1)〜S2(高2)では部活内で責任を持たないといけないような仕事が増え、張り合いのある毎日を送っていました。美術部とPMC(ポピュラーミュージック部の略称/いわゆる軽音部)を兼部し、視聴覚部門(文化祭実行委員の組織の一つ)でも幹部だったので大変でしたが、自分の場合は忙しいほうが無気力に過ごすより気分が晴れやかだった気がします。この時の感覚のまま受験に突入して、S3はお昼休み・空コマ・放課後など暇を見つけてはデッサン室に行って受験対策の絵を描き、美術科の先生に講評していただいていました。
コツコツ頑張ったり人の話をよく聞いたりすることが苦手で、学ぶこと自体が自分に向いていないのではないかと思っていましたが、この頃からモチベーションの維持を含めた自分自身の扱い方がだんだんわかってきて、受験をする頃にはペーパーテストの成績も問題ないところまで上げることができました。

④美大に進むことを決めた理由と、実際に数年間過ごしたうえでの美大の良さ・メリットを教えてください。
美大予備校に通い始めたのはS1くらいからだったと思いますが、当時実際に美大に進学するかどうかはかなり悩みました。私の身内には美術系の大人は一人もいませんでしたし、そもそも親戚全員が大学に進学するような家でもなかったので、大学というのがどういうところなのかもあまり想像がついていませんでした。美大に進学後、絵を描くことが仕事になっていくビジョンが見えず、生きていく方法があるのか不安だった覚えがあります。
不安を抱えてぐるぐると考えているうちに、そもそも芸術の意味とはなんなのだろうという疑問が生まれ、答えを探して美術に関する本をいろいろ読んでみることにしました。この時に学問としての美術の面白さに気がついたことが、4年という時間を美術にかけてみたいという気持ちにつながっていったように思います。こうしてじっくり調べ、考えて進学を決定するに至るまでには、自分が絵に得意意識を持っていたこと、家族が経済面で協力的だったこと、友人が美術の道を強く勧めてくれたこと、フェリスの美術の授業が充実していたことなど、色々な要因がありました。美大予備校も授業料が高いので、通わせてくれた親にはとても感謝しています。
大学院含め7年間を美大で過ごした感想として言えるのは、みんなが制作している環境の中でたくさん絵を描けるというのはかけがえのない経験だったということです。大学のアトリエは広いので自分の背丈以上の作品も気兼ねなく作れますし、周りに刺激を受け続けることはモチベーションの維持にもつながります。絵はどこでも描けるものだと思われがちですが、大学ほど制作に適した環境を見つけるのはとても大変なことなのだと、修了して一年目の今思い知らされているところです。大学側としても「学生には新しい風を感じていてほしい」という思いがあるので、特別講義や自分の専門以外の授業もいろいろと受けることができます。
また授業以外にも、プロジェクトや展示販売への誘い等、様々な話が舞い込んでくる環境なので、世界が広がっていきやすいというのは大きなメリットです。卒業後も大学や大学院でのコミュニティは続いていくので、その意味でも入学して大学と繋がることができ良かったです。


 勉強への苦手意識や無気力だった時期のことなど、ありのままの学生時代を語ってくれたCさん。しかし、お話を通じて、6年間の中で一歩一歩己を知り、周囲とも刺激しあいながら、進むべき道を見つけ出したという印象を受けました。迷った時には改めて知識を学び直すことで自らの指針としたり、進みたい道を見つけた後は自主的に時間を見つけて技術を磨いたりする姿は、まさに自律的な学習者そのものです。
 さて、次回はCさんの現在の関心とフェリスでの学びの交差点についてのお話を伺います。後半もお楽しみに!

「シリーズ:なぜ人は学ぶのか」のバックナンバーはこちら↓
「シリーズ:なぜ人は学ぶのか」①世界史の先生にインタビュー(前編)
「シリーズ:なぜ人は学ぶのか」①世界史の先生にインタビュー(後編)
「シリーズ:なぜ人は学ぶのか」②古典の先生にインタビュー(前編)
「シリーズ:なぜ人は学ぶのか」②古典の先生にインタビュー(後編)

在校中の水彩作品

在校中に作った壁装飾(視聴覚部門)

現在の作品

現在の作品