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日本被団協:原爆投下からノーベル平和賞まで―地歴公民科講演会(7/2UP)

2025.07.02

[行事]

フェリスでは毎年高校生を対象に、現代社会の諸課題についてより深く知り、考える機会として欲しいとの願いから、日本や世界の現場でご活躍されている方をお招きし、講演会を開催しています。
今年は、2024年度ノーベル平和賞を受賞した日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)事務局次長の和田征子氏をお迎えして「原爆投下からノーベル平和賞まで~そしてこれから~」というテーマで講演をして頂きました。後半では、高校生平和大使の神奈川県選出をつとめる本校S3(高三)Hさんにも「核兵器廃絶は単なる理想論なのか?」と題して講演して頂き、さらにお二人の対談も行われ、充実したプログラムとなりました。

和田さんは1943年長崎市で生まれ、爆心地から2.9キロの自宅で被爆されました。きのこ雲の下には、1人1人の人生があり、名前があり、何よりも大切な命があった。それが一瞬で破壊しつくされた様子を、お母様の体験をもとに語ってくださいました。長崎では12月までに7万人(±1万人)の方が亡くなり、アメリカの占領下の厳しい報道管制の下で、何の情報も、医療も経済的援助もなく、隠れるように生き延びなければなりませんでした。そうした被爆者の方々の何重もの苦しみが、1954年のビキニ事件によって放射能の怖さを知った国民の署名活動と重なり、やがて1956年日本被団協設立へと繋がります。
被団協は、核兵器の廃絶や被爆者の救済を訴え、「ふたたび被爆者をつくらない」ことを目指し、原水爆禁止署名運動や国連本部での原爆展開催など、世界に向けて行動を起こし続けてきました。長年にわたるこうした草の根運動で、核や暴力の力によるのではなく、声をあげること、自分たちの体験を通して証言することによって世界が変わるということを示し、ノーベル平和賞の受賞に至りました。和田さんはノルウェーのオスロで開催された平和賞授与式にも代表団の一員としてご出席され、その時の喜びやこれからの活動に向けた決意を語って下さいました。

その後、高校生平和大使をつとめる本校S3のHさんからも、一年間の活動を通じて考えたことや、核兵器廃絶に向けた想いを話してもらいました。
高校生平和大使とは、「ビリョクだけどムリョクじゃない」をスローガンに、核兵器の廃絶と平和な世界の実現目指し、署名活動や研修・発信等を行う高校生主体の活動団体です。(以前の特集記事はこちら
Hさんは第27代高校生平和大使として、一年間にわたり駅や学校などで地道な署名活動を重ねつつ、スイス・対馬・ノルウェー・ニューヨークと世界各地へと派遣され、国際交渉の舞台で研鑽を積んでこられました。

Hさんは「平和とは、日常」と語ります。「今高校生の自分たちが思い描く未来には当たり前に家族や友人がいて、でもそのような日常は、ひとたび戦争や核兵器の使用がなされれば、一瞬で奪われてしまう。平和活動に携わるのは『意識が高い』と敬遠されてしまうこともあるが、自分としては『今ここにある日常を守るための当たり前の活動』であり、全く高尚なことでも特別なことでもないのです。」というメッセージが胸に響きました。
被爆者の方の想い、そしてその方からバトンを受け取った若い世代の想い。お二人の対話に心を揺さぶられ、平和について深く考えることができた貴重な機会となりました。

和田征子氏をお迎えして

高校生平和大使からのメッセージ

対談では多くの質問に答えて頂きました