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「シリーズ:なぜ人は学ぶのか」①世界史の先生にインタビュー(前編)(5/8UP)

2025.05.08

[プロジェクト]

なぜ、人は学ぶのでしょうか。
「学問の尊重」を大切にするフェリスにおいて、これはとても重要な問いです。みなさんは、自分なりの答えを持っているでしょうか。
本シリーズでは、教員や卒業生をはじめ、フェリスとさまざまな形でつながる関係者にインタビューを行い、この大きな問いに迫ります。各人の学問に対する熱い思いや、自身の貴重な経験談など、普段は聞けない四方山話を通して、「学問の尊重」という考え方が、どのような形でフェリスの中に息づいているかをお伝えします。

記念すべき第一回目は、世界史のA先生です。
フェリスのOGで、いつも世界中をパワフルに飛び回っているA先生。その歴史に対する深い知見と実感に基づいたユーモアのある語り、そして時折授業に持ってきてくださる謎のグッズ(!?)は、生徒たちから大人気です。先生の授業のおかげで、断片的だった世界史の知識を有機的に結びつけることができたとの声も多く聞かれます。
インタビュー前編は、A先生のこれまでの経歴や、ライフワークである旅について紹介します!

Q1.先生の大学での専攻を教えてください。                                     
 大学では、歴史学を専攻しました。リベラルアーツ系の大学だったので、最初は政治や社会学、英日翻訳など幅広く学びましたが、大学三年生の時に受講した「日本近世史」の授業で、「江戸時代= 鎖国し、国を閉ざしていたという認識は誤り」という近年の歴史学の見方を知り、過去におこったことをただ学ぶのではなく、批判的に検証していく学問としての面白さに魅了され、歴史学を専門に選びました。

Q2.先生は企業からフェリスへ転職されたとのことですが、その決め手は?
 大学で教員免許は取得していて、教員になりたい気持ちはずっとあったものの、一方で、翻訳家にも憧れていたので、新卒の時は企業法務の翻訳をする仕事に就きました。契約書などの法律文書は専門用語も多いですし、ミスが許されないので、何度も何度も確認しながら文書作成をしていきます。大きな案件が終わると、チームの上司が料亭や隠れ家レストランなどに連れて行ってくれ、大人の世界を垣間見させてもらえて、とても楽しかったです(笑)。20代はそうして東京生活を満喫していましたが、何のために働くのか、人生をかけたいものは何なのかと自問した時に、愚直に歴史教育と向き合っていくのが性分に合っているのではないかと思うようになりました。
新聞を読んでも、海外を旅しても、私の関心は常に「社会」そのものにあり、なぜそうなっているのか、どのようなことが問題なのかを知り、考え続ける人生でありたいと思った時に、教員になる覚悟ができたかなと思います。
そのようなわけで、遅めの教員デビューとなりましたが、元々人前に出て喋るということが好きなタイプではないので、最初の頃は緊張のあまり夢の中でも授業をしていました。悩みながら試行錯誤の日々でしたが、「先生のおかげで世界史が大好きになりました。」と手紙をもらったりすると「生きてて良かった!」と思うほどの感動があり、そうした生徒たちの楽しそうな顔が私の原動力です。

Q3.先生は何十カ国も海外を旅されてきたと伺っていますが、これまでで最も印象的だった海外でのエピソードを教えてください。
 中国の雲南省イ族民族自治区に滞在していた時に、体調を崩し、四肢に謎の斑点まで出てきて寝込んでしまいました。村で一番の名医を呼んでもらい、当時はネット翻訳などもあまりなかったので、持参した「旅の指差し会話帳」で「お腹痛い」とか「気持ち悪い」とかを文字通り指差して必死の伝達を試みました。名医は力強く頷き、漢方薬を処方してくれたのですが、木の枝や葉っぱ、石などを煮詰めたどす黒い液体を差し出され、「石・・?」という心の葛藤に蓋をして、飲んだら翌日には劇的に回復したのです!それ以来漢方には絶大な信頼を置いています。
雲南省はミャンマーやラオスと国境を接していて、大麻などが密輸されるルートとなっており、その雲南省から一人で帰ってきた怪しい女子大生として、成田空港で長時間念入りに検査されたことも思い出深いです。

Q4.先生は授業の際に旅先で入手した様々なグッズを持参されていますが、中でも特にお気に入りのグッズはありますか?
 ネパールで購入したチベット仏教の仏具たち(下に写真あり)です。マニ車は、回転させた数だけ経を唱えるのと同じ功徳が得られるという仏具で、大きさは様々ありますが、手のひらサイズのものを買ってきました。現地ではソーラーシステムのマニ車というのもあり、太陽の光で延々とクルクル回っていて、伝統文化と現代技術の融合に感心しちゃいますね。
生徒たちにもマニ車は大人気で、皆で順番に回しながら「今、私たち徳積んでるね」と大喜びしてくれます。



前編は、先生が教師を志したきっかけから旅での珍事件に至るまで、A先生らしさ全開のインタビューとなりました。お話を聞くだけでも、企業と学校、日本と海外など、多くの世界を生き生きと横断する先生の力強い姿が浮かび上がってきます。
さて、次回のインタビュー後編では、いよいよ「なぜ人は学ぶのか」という問いに向けて、フェリス、そして世界史の魅力を語りつくしてもらいます。
後編は来週更新予定です。お楽しみに!

 

チベット仏教の仏具(左:マニ車 右:シンギングボール)

ネパール最大のチベット仏教寺院にてマニ車をまわす

中国・新疆ウイグル自治区のトゥルファンにて

バックパックでシルクロードを巡る旅

エストニアのロシア正教会にて

息子さんとバルト海を巡る旅