今こそ福島原発事故を考える―地歴公民科講演会(5月8日UP)
2024.05.08
[行事]
フェリスでは毎年高校生を対象に、現代社会の諸課題についてより深く知り、考える機会として欲しいとの願いから、日本や世界の現場でご活躍されている方をお招きし、講演会を開催しています。
今年は、獨協医科大学の木村真三准教授をお迎えして「福島原発事故とハンセン病~共通する問題~」というテーマで講演をして頂きました。
木村先生は幼い頃に森永ヒ素ミルク中毒事件を間近で目撃し、安全なはずの商品が人びとの人生を大きく変えてしまうということにショックを受けられたそうです。
そのような原体験をもとに、チェルノブイリ原発事故における放射線の影響を研究され、ウクライナ・ベラルーシでの現地調査を長年続けてこられました。
2011年に福島第一原発事故が起こった際は、当時勤めていた厚労省所管の研究所から福島入りを止められたため辞表を提出したうえで、無職の状態で初動調査を始め、住民の被ばく防止に努められたそうです。
一方で、先生ご自身も、大叔父様がハンセン病患者だったことから、ご家族が背負った苦悩を身近に感じてこられました。一族からハンセン病が一人出ると、その患者のみならず血縁者も結婚が阻まれたり、経済的な困難を抱えてしまう時代でした。
また広島や長崎の被爆者も同じように、健康に不安を抱えながら、さらに社会的にも差別される状況が続きました。
福島でも「私は子供を産めないのか」と女性が泣きながら先生に尋ねられたそうです。
こうした問題に共通する、人権への意識の在り方を、変えていかなくてはいけないと先生は語ります。
「みなさんは、我が事として人権問題をとらえることができますか?」という問いかけが、胸に刺さりました。
質疑応答では、生徒から日本のエネルギー政策、処理水問題、政治のかかわり方、福島の農業についてなど次々と質問が出されました。講演後も「科学的なデータに基づく話でワクワクした」「メモを書ききれなかった」と興奮冷めやらぬ様子で、友人と活発な議論が交わされていました。
科学だけに目を向けると真実が見えなくなる。社会に目を向けることによって、今の置かれた現状が把握できる。それをもとに研究していくことがこれからの科学者に求められることではないか、という先生のメッセージが生徒たちの心にも響いたことと思います。