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西洋館で「観る」美術②

2022.04.14

[授業]

前回に引き続き、横浜山手芸術祭ユースギャラリーに出展された生徒の美術作品を紹介しながら、フェリスの美術教育の流れをたどります。会場は元町公園内の西洋館エリスマン邸です。

~ 中3 「ことばをながめる、ことばとあるく」~

本や漫画の台詞など、何でも良いので「好きな言葉」をデザイン化する課題です。
「好き」という純粋な感情から出発するこの課題は、生徒に高い人気を誇ります。
やらされているのではなく、やりたいからやる。生徒の主体的な姿勢が、より良い作品づくりにつながります。
言葉に対する感情は人それぞれ違うので、どうビジュアル化するかが問われます。

この「ことばをながめる、ことばとあるく」は、学校ではなくエリスマン邸に展示されたときに雰囲気が大きく変わる作品でもあります。
窓から差し込む光にあたって輝く姿が美しく、生徒の中には外の光を透かして見せることを前提に作品づくりをする人もいます。
近年の生徒たちの見せ方の上手さは、美術科の先生も舌を巻くほど。
四角形の中の構図の取り方など、SNS映えする写真の撮影に慣れた生徒たちのセンスには目を見張るものがあるそうです。

(写真中の作品に使われた言葉の出典は、添付のPDFをご覧ください)


~ 中3 手触りのいい木彫 ~

家具や将棋盤などに使われる桂の木。
立方体の桂材を、のこぎりや鬼目ヤスリで好きな形に削り出し、サンドペーパーでヤスリがけします。
最後にミツロウで磨き上げ、つるつるになったら完成です。
普段はスマホやタブレットなどの機器を触ることが多い生徒たちにとって、触っているうちにじんわりとあたたかくなる木の感触は新鮮です。
生徒の中には、「こんなに木を触ったことない」と呟く人も。
何の変哲もない木材も、丁寧に削り磨いていくうちに少しずつ手触りが変化し、最後にはうっとりするほど滑らかになります。
地道な作業ではありますが、忙しい日々を過ごす生徒たちにとっては、木のぬくもりに触れてほっと一息つける時間です。

~ 高1(選択美術) 油絵 ~

高校1年生の必修選択では、生徒たちは美術・音楽・体育・家庭科のうち好きな教科を選択します。
美術を選択した生徒が取り組むのは、油絵。
前期の課題は静物油彩で、あらかじめセットされたモチーフを描写します。色などは実際のものと変えても構いません。
ほとんどの生徒は油絵を描くのが初めてなので、まずは油絵の具に慣れ、基礎を固めるところから始めます。
少しずつ油絵の描き方を掴んできた頃、夏休みの課題として、自由な題材で油絵を1枚描くことが課されます。
自宅で一人で描くことになりますが、自ら美術を選択しただけあって気合十分の生徒たちの描く作品は、初めてとは思えない仕上がりです。
飼っているペットの絵や自画像から、想像の中の世界を描いた作品まで、個性あふれるハイレベルな作品を観賞し合った生徒たちは、互いに大きな刺激を受けている様子です。

~ 高2(選択美術) 水彩画 ~

高校2年生の選択美術の受講者には、美術系の進路に進む人が少なくありません。
高校1年生までの美術の授業は、楽しむことが大きなテーマでしたが、高2からは、将来を見据えてより専門的な内容を扱います。
フェリス生の主体的で多様な進路選択をサポートし、卒業後の糧となるしっかりとした実力を身につけてもらうため、熱心に指導が行われます。
美術を愛する生徒たちが描き上げた静物水彩画はかなり本格的。
同じモチーフを描いていても、それぞれの色づかいや視点によって全く違う作品になることに、エリスマン邸を訪れた後輩たちが驚く姿が見られました。


こうして見ると、フェリスの美術の授業で取り組むすべての課題には、「観ること」を大切にする姿勢が貫かれていることが改めてわかります。
作品づくりの過程で、自分の内面をじっくりと見つめること。
他者の作品を観賞し、つくり手の見ている世界に思いを馳せること。
そして互いの心の内を言葉にして語り合い、新たな発見に満ちた世界を楽しむこと。
ただ一つの「正解」を押し付けるのではなく、自分の心と対話し、他者と対話する中で自分なりの考えを育てていくことを大切にするフェリスの教育らしさが、
一つひとつの美術作品の中にもしっかりと息づいています。

中3 「ことばをながめる、ことばとあるく」

中3 手触りのいい木彫

中3 手触りのいい木彫・「ことばをながめる、ことばとあるく」

高1(選択美術) 油絵

高1(選択美術) 油絵

高2(選択美術) 水彩画