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西洋館で「観る」美術①

2022.04.14

[授業]

青緑色の鎧戸が映える白亜の洋館。
異国情緒あふれるエリスマン邸にたたずむ作品たちは、趣ある上げ下げ窓から差し込む光に照らされ、学校で眺めるのとは違った輝きを放ちます。

今年も、山手地区の学校の児童・生徒の美術作品展である「横浜山手芸術祭ユースギャラリー」に、美術の授業で制作した作品を出展しました。
会場としてお借りしたエリスマン邸は、1926年に建築された洋館を元町公園内に復元したものです。

フェリスの美術教育では、「観ること」を大切にしています。授業の中で作品をつくって終わり、ではありません。
友達の作品を観賞し、自分の作品を観てもらうことで、多様な意見に触れ、新たな発見をします。
ユースギャラリーへの出展は、クラスや学年の友達だけでなく、先輩後輩、保護者の方や一般の方にも作品を観てもらうことのできる貴重な機会です。
また、学校ではない別の空間に展示することで、その空間の持つ雰囲気との化学反応が起こり、作品の見え方が変わることに新鮮な驚きが生まれます。

ユースギャラリーに出展された作品とともに、入学後に始まるフェリスの美術教育の流れをたどっていきましょう。

~ 中1 飛び出すカード―私を構成するもの・取り巻くもの― ~

新しい学校生活に慣れてきた生徒たちがつくるのは「自分」を表す飛び出すカード。
好きなことや大切にしているものなど、題材は自由ですが、「これが私です」ということが伝わることが条件です。
仕掛け自体はシンプルに。単に技術にこだわるのではなく、自分の内面を深く見つめて表現することを大切にしています。

~ 中1 「おもしろりんご」「そっくりんご」 ~

続いて中学1年生はユニークな課題に取り組みます。その名も「おもしろりんご」「そっくりんご」。
授業ではまず、白い紙皿に乗ったりんごが各班に1個ずつ配られます。
このりんごをひたすら観察し、色も形もそのまま再現するべくしっかりと写生します。
次に、一人ひとりに配られる白い紙粘土を丸めて、先ほど観察したりんごそっくりの立体をつくります。
そこからひたすら本物らしさを追求した「そっくりんご」をつくるか、自分だけの豊かな発想で「おもしろりんご」をつくるかは各自の自由。
最初は皆りんごから始まりますが、最終的にりんごでなくなってもかまいません。
1つのものをずっと観察し、どんどん発想を膨らませていきます。
途中で「これって何だっけ?」とゲシュタルト崩壊が起こるくらい、対象をじっと見つめるところから、自分だけの創造の扉が開かれていきます。

~ 中2 校内スケッチ ~

消せないペン1本だけを持って、学校内のお気に入りの場所を自由にまわってスケッチする。
他の学年の生徒が教室で授業を受けている時間に、静かな学校内を歩きまわる特別感が、生徒の心をくすぐる課題です。
ルールは1つ。一人でまわること。
普段の学校生活では一人になる機会はあまりありませんが、心を研ぎ澄ませて目の前のことに向き合う自分だけの時間も大切です。
思い思いの場所でスケッチを描き溜めたら、次の授業では美術室で着色します。
まずは、記憶を頼りに実際の色彩を再現します。「こんな色だったかな?」という試行錯誤が、色づくりの工夫につながります。
2回目は、実物にとらわれず自由に彩色します。毎日来ている学校であっても、新しい見え方があることに気づく時間です。

~ 中2 世界で一つだけの「紙の立体造形」を作ろう! ~

好きなモチーフを、白い紙だけで立体化する課題です。
例えば、ペットボトルを白い紙だけで再現したらどうなるでしょうか。
たとえ形をそのまま再現しても、素材が違えば、新しい発見が生まれるはずです。
生徒たちは、部活動で演奏している楽器など、思い思いのものを真っ白な紙だけでつくり上げます。
紙立体制作で大切にされているのは、最後まであきらめないこと。
どんなに拙くても、目の前のものをよく観察し、形として再現することで、達成感が得られます。

*エリスマン邸公式サイト
https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/yamate-seiyoukan/ehrismann/

中1 飛び出すカード

中1 飛び出すカード

中1 「おもしろりんご」「そっくりんご」

中1 「おもしろりんご」「そっくりんご」

中2 校内スケッチ

中2 校内スケッチ

中2 紙立体制作

中2 紙立体制作