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新聞部による平和学習リポート

2021.06.03

[クラブ活動]

 新聞部の生徒による記事「高1平和学習―横浜でヒロシマを考える3日間―」をご紹介します。
 


 1日目

 S1平和学習第1日目のスケジュールは、平和記念資料館(原爆資料館)からお借りした展示の見学から始まった。小礼拝堂、S3の教室、カイパー講堂の壁に配置された原爆に関する資料をクラスごとに見てまわった。被爆体験者と高校生との共同制作による原爆の絵や、被爆遺品である焼け焦げた服や瓦などは、原爆被害がどれだけ悲惨だったかを物語っていた。次にカイパー講堂に移動し、この後行われる大瀧慈(おおたきめぐ)先生によるオンライン講義の一部であるパワーポイントを、社会科の先生の説明とともに視聴した。その後、原爆によって焼けた建物や、人々のそのままの様子が鮮明に残されたDVDを視聴した。原爆によって負った火傷や傷、脱毛してしまった子供など、あまりにも生々しく痛ましい映像に衝撃を受けている生徒も多くみられた。
 大瀧慈先生によるオンライン講義は、各HRでプロジェクターを活用し、広島と中継を繋いで行われた。先生の40年余りにわたる研究によって解明されてきた原爆の健康被害について、統計に基づいた専門的で科学的な事実を学んだ。講義の後には質疑応答の時間が設けられ、生徒からの本質的な質問がいくつかみられた。

 午後は、11歳の時に爆心地から2,5キロの地点で被爆された山田玲子さんから被爆体験を聴いた。原爆投下当時から現在までの山田さんが体験された困難や差別、各国でそれを証言された経験を話していただいた。日本にいるだけでは分からない、外国人の方が原爆の話を聞いた時のリアルな反応を知ることができた。アメリカで証言をされた時に、学生に「アメリカ人を恨んでいるか」と問われた山田さんの「私たちはアメリカ人を恨んではいない。恨むのは原爆だけだ。」という答えはとても印象的で、平和に対する思いが感じられた。質疑応答では、多くの生徒が山田さんと積極的に意見交換を行っており、生徒たちは未来に対する被爆者の方の願いを理解するができた。

 2日目

 2日目は中国新聞社に長く勤め、世界中の様々な核の問題に取り組んでこられた田城明先生によるオンライン講義が行われた。過去に核によって起こった事故や自然破壊のニュースなどを通してどのような形でも原子力に頼ってはいけないということを訴えかけた。
 その後はカイパー記念講堂に移動し、平和学習委員による、現在の核問題に対するプレゼンテーションが行われた。四つのグループに分かれ、それぞれのテーマに沿って発表を行った。
 午後からは白黒写真をカラー化する「記憶の解凍」という活動を行っている庭田杏珠さんの講演を聴いた。白黒写真をカラー化することによって戦前・戦後の日本をより身近に感じることが出来ると庭田さんは言う。戦前の日本にも現在の私達と変わらない平穏な日常があったこと、それらが一瞬にして壊れてしまったことがカラー化したことにより以前よりも強く感じられるようになった。まだ大学1年生だという庭田さんの若さに驚くと共にその行動力に感銘を受けた。
 その後は生徒による戦争に関する本の発表、そして「平和な世界を実現するために、あなたができること」というテーマで意見交換がなされた。多くの生徒が積極的に意見を述べ、活発な議論が行われた。

 3日目

 3日目の最初のプログラムは、本校の卒業生であり、現在は国連事務次長として活動されている中満泉さんへのインタビューが行われた。カイパー講堂とニューヨークを繋ぐ初めての試みである。これはコロナ禍だったからこそ実現できたプログラムである。中満さんの学生時代のお話や、国連での仕事についてなど、様々なお話をお聞きすることができた。その後に行われたメインセッションでは、とても多くの生徒が次々に質問をし、予定時間ぎりぎりまで積極的な交流が続いた。国際社会で様々な価値観の人々と仕事をするにあたって、どこが違っているのかではなく、どこが共通しているかに目を向けることが重要だというお話があった。これは私たちが日頃の生活に取り入れるべき良い教訓と言えるだろう。
 その後、各HRで広島と中継を繋ぎ、平和公園周辺のオンランツアーを体験した。プロのガイドの方によるユーモアあふれる解説とともに広島の現在の様子が映し出され、実際に広島を訪れているように感じることができた。中でも衝撃だったのは被爆した路面電車が原爆投下3日後に電車が復旧したという事実である。当時そのことは多くの市民を勇気づけたに違いない。
 午後は、2日目に引き続き田城明先生によるオンライン講演が各HRで行われた。未だに核の脅威が続く中で、これからを担っていく世代である私たちがどのような役割を果たすべきなのかを現在の国際情勢と絡めてお話ししてくださった。世界中で平和のために活動している若者をご紹介して下さり、私たち一人一人にもできることがあるということを自覚することができた。平和のために何もしないということは、日本人が果たすべき最も重要な役割を放棄するようなものだという先生の言葉はとても印象的で心に残っている。

 コロナ禍という状況で例年とは大きく違った平和学習となったが、原爆について触れ、平和について深く考えた貴重な体験だった。

 
(『Ferris』329号 フェリス女学院中高新聞部 2021年5月27日 発行)
 



















































 

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